竹内歯科医院 デンタルメモ89
「口腔外科医が考える親知らずを抜く時期とは?」
こんにちは。今回は息子の竹内じゅんぺーが、口腔外科医として抜歯してきた経験を踏まえ、親知らずを抜歯する時期に関して、私見を交えながらお話したいと思います。来院される患者さんからよく聞くのは、「腫れてきました。」「手前の歯がむし歯になってきたみたいです。」「矯正のために抜くように言われました。」等です。では、いつ抜きましょうか?「今でしょ!」が思い浮かぶ方は、世代が僕以上の方々かもしれません(笑)。今までに何千本も親知らずを抜歯してきましたが、本当に難易度は様々です。その中で確実に思うことは、若いうちに抜歯しておくのが無難だなぁ、ということです。その理由は3つあります。
- 若い間に親知らずを抜いた方がいい理由とは?
- 現代の日本人の顎の大きさで、健常に親知らずが機能している方は少ないとされています。元々の顎の大きさにすべての歯が入りきらないため、埋まってしまっていることが多く、実際に噛むこともできないわけですが、それでもむし歯や歯周病は発症します。しっかり歯磨きを行い管理できればいいかもしれませんが、埋まっている歯や一番奥の歯はそもそも磨きにくいので、むし歯や歯周病が進行しやすいのです。親知らずだけが悪くなってくれればいいのですが、そうではありません。また顎が小さい子は、親知らずのせいで歯並びが悪くなる子もいます。逆に矯正したあとでも、親知らずによって再び歯並びが悪くなることもあります。つまり1つめの理由は親知らず自体はあまり機能していないにも関わらず、親知らずのせいで手前の歯や周囲の骨、また歯並びが悪くなりやすいからです。
- また親知らずが痛むときはどんな時が多いでしょうか?もちろん単純にむし歯が進行している場合もありますが、疲れたときや妊娠によるホルモンバランスの影響で親知らずの周囲が腫れて痛むこともあります。腫れた場合には抗生剤を処方したり抜歯をすればいいのですが、これも意外にタイミングが難しいのです。実際には、仕事や家事等が忙しくて通院自体ができなかったり、また抜歯後1週間は顔が腫れたりするため、これも不都合になることが多いです。妊娠しているときは、もっと悲しくなります。抗生剤や麻酔、レントゲン撮影の影響が赤ちゃんに及ぶかもしれないためです。2つめの理由としていざ治療したくても、できない場合があるからです。
- 3つめの理由はシンプルで、歯科医師の都合です(笑)。10代から20代というのは骨も柔らかく、また親知らずの根っこが完成していません。親知らずの根っこが伸びてくると、骨と絡まったり、また抜歯後近くにある神経にダメージが出やすくなります。硬い骨を削って、神経を傷つけないように抜くのはとても大変です。また若い患者さんの方が傷の治りもいいように感じます。つまり最後の理由は僕が抜きやすい、治りがきれい、合併症を引き起こしにくいからです。
- 若い間に親知らずを抜くことは、お互いにWin-Winです!
もちろん年齢があがったからといって、親知らずを抜かなくていいという話ではありません。
どうせいつか抜くなら…、このタイミングで僕の話を聞いてくれたなら・・・、いつ抜歯するべきかを一緒に考えさせてくださいな、といった一つの提案でした。僕の子供は、嫌がられてでも、必ず学生の間に抜歯させます(笑)。自身だけでなく家族も含め、ご検討いただければ幸いです。
R 2. 8