「心臓病と歯周病の関連」
こんにちは。歯周病は中高年の90%近くの方が罹患している病気で、歯を失う一番の原因となっています。この歯周病が、最近の研究によると他の全身疾患と関連していることが分かってきました。例えば、糖尿病・心臓病・誤嚥性肺炎・早期低体重出産などです。その中で、今回は「心臓病と歯周病の関連」についてお話ししたいと思います。(参考文献:歯周病と全身疾患の関係 長寿科学振興財団、
歯周病と心臓病の関連 神戸労災病院循環器科TOPICS)
- 心臓病と歯周病 歯肉と歯との間に細菌が入り炎症が生じると、歯肉の上皮組織は断裂して歯周ポケットができ、血管に細菌が侵入することがあります。このように、本来無菌であるはずの血液中に細菌が認められる状態を菌血症といいます。侵入した細菌が血流にのり、全身にまわって各臓器に定着すると、何らかの全身疾患が引き起こされる場合があります。健康な方では免疫機構により細菌は排除されますが、重篤な病気をお持ちの方や、全身状態が悪く抵抗力が低下している高齢者では細菌を十分排除できずに定着してしまう恐れがあり、敗血症(注)に移行することもあります。 口腔内の歯周病菌が増えると、炎症をおこしている細胞から血液中に「サイトカイン」という情報伝達物質が放出されます。サイトカインとは細胞から血液中に分泌されるタンパク質のことで、種類によってさまざまな働きをします。炎症をおこしている細胞がサイトカインを産生し病原体を排除するときに、アレルギー反応のように自分の組織に傷害を与えたり、産生されたサイトカインが心血管病を引き起こすと考えられています。
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- (2)歯周病菌に対する生体防御反応が心臓病に関与
- 歯周病の患者さんは、歯の周囲にプラーク(歯垢)が蓄積し、歯肉に炎症が生じて腫れていますので、咀嚼運動(そしゃく:物をよくかみ砕き味わうこと)やブラッシングを行うことで一過性に口腔細菌が血管内に入り、菌血症を生じることがあります。
- (注)敗血症とは、「感染を原因として全身性に炎症が起きている状態」です。
- (1)歯周病菌が、血管から全身に運ばれる
- 心臓病への関与は、歯周病菌または菌の成分が何らかの形で心臓にまで辿り着くことによって引き起こされると考えられます。その経路として、次の二つがあります。(1)炎症により破壊された歯肉内に歯周病菌が侵入し、血管から全身に運ばれる。(2)歯周病菌に対する生体防御反応が心臓病に関与する。
- 歯周病と心臓病の因果関係が明らかになり、厚生労働省が国民健康づくり運動として提唱している「健康日本21」の中でも、歯周病が全身の健康に悪影響を与える危険因子として位置づけられています。このような事から、重篤な病気をお持ちの方や、抵抗力が低下している高齢者の方においては、口腔ケアは単なる「お口の予防」ではなく、「全身疾患の予防」と考えていただきたいと思います。